学部?大学院
松原 夢伽さんからのメッセージ
1. 現在の仕事について教えてください。
障害学生支援に携わるコーディネーターになって4年目、京都大学に着任して1年が経ちました。 コロナ禍の真っ只中であったこともあり、新しい環境に慣れるのに時間がかかりましたが、その分、支援ルームのスタッフたちや学生たち、関連部局とコミュニケーション?情報共有を取りながら業務に努めた1年でした。
これまでは修学上における支援が業務の中心だったのですが、今は社会移行プログラムなどにも携わり、新たな経験ができていると感じています。
2. 在学中のどんな学びが仕事に活かせていると感じますか?
2年生で履修した障害学生支援コーディネート実習では、他大学の障害学生支援室へ実習に行かせていただきました。 もちろん業務の深いところまで経験できたわけではありませんでしたが、各大学の支援の方針や理念にはしっかり触れることができました。 大学ごとにカラーがあり、それぞれの考えをもって支援が行われていることを肌で学べたことは、今の仕事に大いに生きていると思います。
3. 障害学生支援コーディネーターを目指したきっかけを教えてください。
学部生の時、「聴覚障害学生が入学するから支援室を一緒に立ち上げてほしい」と声をかけていただいたことがこの分野に携わるきっかけでした。 初めて情報保障支援を知り、手話を覚えながら聴覚障害学生と接したことは人生を変えるほどの大きな経験で、無駄にしたくないと思っていたところ、ノートテイク講座の指導に来られたろう者の講師に、筑波技術大学にある情報アクセシビリティ専攻に行けばもっと勉強ができると教えていただきました。 そこに行けば障害学生支援のコーディネーターを目指せると思い、進学しました。
4. 情報アクセシビリティ専攻での学生生活を振り返って
まず、ある先生から「聞こえない学生たちは18年間ずっと我慢して生きてきたから、筑波技術大学ではのびのび学んでほしいと思っている」という言葉を聞いたときに衝撃を受けました。 「聴覚障害者は周りにお願いするばかりでいいのだろうか」とさえ思っていたことを深く反省し、障害のある方々を取り巻く環境や文化の側面の大切さに目が開かれたことが、大学院生活の出発点となりました。
寄宿舎に入居していたのですが、何より、聞こえない学生ばかりの寄宿舎に入居して暮らしたことがとても大きな経験で、まるで海外留学をしているような感覚でした。 筑波技術大学にいる学生たちは、私にとっては全員”先生”といってよいくらいです。2年間の生活を通して得たことは測り知れません。
大学院の範囲でいうと、自分の同期には、聴覚障害者、聴者、社会人経験者、現職教員などいろいろな背景をもつ方がいて、共に学べたことでたくさん刺激を受けました。 年度によって学生層は違うと思いますが、こうした多様性はこの専攻ならではだと思います。
5. 研究活動はどのようなものでしたか?
修士論文で、大学に在籍する聴覚障害学生の海外留学に対する意識調査を行いました。 自分自身も留学経験があり、海外で学びたいという聴覚障害学生の話も聞いていたので、聞こえない学生にとっての不安や、留学を促進するための要因について研究しました。 自分だからこそできるテーマを見つけ、テーマに合う研究手法を指導していただけたことが、研究を進めるにあたり重要なことだったと思います。
6. 情報アクセシビリティ専攻だからこそ得られたもの
ろう者の先生から日本手話で専門分野の授業が受けられること、またコーディネーターになるための演習的な授業(障害学生支援コーディネート実習など)があったことは、ここでしか得られない学びだと思います。
また、小さな大学ゆえのメリットでもありますが、先生方の存在が身近だったので、専攻の先生だけでなく他分野の先生でも研究室を訪ねて直接質問したり、話を聞いていただいたりすることができました。
改めて2年間を振り返ると、聴覚障害の専門の先生がいて、また障害学生支援の領域に造詣の深い先生もいて、研究も将来の夢も、先生方の手厚いご指導やサポートを受けて実現することができたと感じています。
7. これからの夢、目標を教えてください。
コーディネーターの仕事は終わりがないと日々感じます。 今後も障害のある学生たちの近くで、長く仕事を続けていきたいです。 筑波技術大学で学んだ聴覚障害学生支援の専門性は強力な武器ですが、さらに仕事の幅を広げられるよう、資格取得を目指して勉強を始めました。 学生時代の支援活動で十分できなかったことを、今の学生たちに少しでも還元したいという思いと、それが実現できる職場に恵まれたことに感謝して、日々精進していきたいと思います。
8. これから情報アクセシビリティ専攻で学ぶ人たちへ、メッセージをお願いします。
筑波技術大学という環境は、(聴者にとっては)何もかもが新鮮で、学ぶことばかりで、特に障害者支援を学びたい人にとって、これ以上リソースの豊かな大学はほかにないと思います。 ぜひ、怖がらず飛び込んでほしいです。 私自身、コーディネーターとしての責任感など仕事に就いてから学んだことは多いですが、その基盤となる知識や支援への姿勢、障害観は、情報アクセシビリティ専攻にいたからこそ培われたものだと思っています。
今はまだ20代の世代のコーディネーターは全国的にも少ないですが、今後は、若手コーディネーター同士の横のつながりを強くしていくことが自分の役割でもあると思っています。 一緒に障害学生支援を盛り上げていく仲間が増えることを心から期待しています。